雲仙・普賢岳
雲仙・普賢岳の噴火で生まれた「平成新山」(1483メートル)の状況を調査する防災登山が今月14日にあった。火山学者や自治体関係者ら約60人とともに、通常は立ち入り制限されている警戒区域に入った。【足立旬子】
【画像】岩の上に「あんたはエライ!!」と書かれた心ない落書き
防災登山は長崎県島原市と九州大地震火山観測研究センター(島原市)が1995年から毎年秋と春に実施。情報共有のため、国土交通省雲仙復興事務所や警察、消防関係者らも参加している。
◇警戒区域入り
雲仙ロープウェーの妙見駅から約1時間歩き、警戒区域のゲートを開け平成新山に入ると、それまでの新緑の風景が一変した。行く手には大小さまざまな溶岩が不安定な状態で積み重なる。間に落ちないよう慎重に岩に足を乗せ、両手を使ってよじ上る。全員ヘルメットをかぶり、落石があっても巻き込まれないよう、斜面を横断して頂上を目指した。
◇心ない落書き
途中、直径1メートルほどの岩の上に「あんたはエライ!!」など黄色い塗料で落書きがあった。何者かが無許可で立ち入って書いたと見られ、12カ所で確認されているといい、市職員が溶剤とブラシを使って一部を消した。
山頂では、岩の隙間(すきま)から噴気が上がっていた。同センターが測定したところ、温度は約86度で、昨秋と変化はなかった。95年には700度あり、硫化水素の臭いがしたというが、今回は臭いはなく、成分のほとんどが水蒸気だった。
同センターの松島健准教授(固体地球物理学)は、「マグマが関与する噴火は少なくともここ数年はないと考えられる。ただし、水蒸気爆発はいつ起きるか分からない。また、溶岩ドームは熊本地震で小規模な崩落があり、島原半島で地震が起きればより大きな崩落の恐れもある。不用意に近づくべきではない」と注意を呼びかけた。
◇緑増えている
山頂付近では草木が岩を覆い始めているところもあり、昆虫もいた。5年ぶりに登った古川隆三郎・島原市長は「緑が増えていて自然の再生を感じる」と話した。6月3日には死者・行方不明者43人を出した大火砕流発生から27年を迎える。